Idiot's Delight

煩悩まみれで気軽に日々を過ごしております

読書『キリストと性 ーー西洋美術の想像力と多様性』世界最古のBL?だったのかもしれません

今日も仕事です。

今回は最近読み終わった本について書いていこうと思います。

 

『キリストと性 ーー西洋美術の想像力と多様性』(岡田温司岩波新書)という本です。

 

この本を読む前は、キリスト教といえば性に厳格というイメージがありました。神父様は独身でなくちゃいけない、なんてことも聞き齧った記憶があり、「ということは童貞でいなくちゃいけないんじゃないか?」と思ったこともあります。とても禁欲的で抑圧的な印象を持ってました。

 

でもこの本を読んでみると、そんなキリスト教の中にも(あとがきでは”異端”や”マイナー”と記載がありましたが)さまざまな性的な表現が、絵画や彫刻として描かれていると紹介されております。しかもそれが多様性に富んだものだったのです。

 

キリストの脇の傷を女性器に見立てたものや、キリストを女性化しているものなどなど。

 

特に印象的だったのは以下の文章です。

ルネサンスの都フィレンツェで最初の女性画家にして修道女でもあったブラウティカ・ネッリが描いた油彩画の大作では、イエスが左手でその旨に弟子を優しく抱き寄せるところがとらえられている。ネッリは、ドミニコ書いの修道女でもあった独学の画家で、女性にも見紛うようなこうしたヨハネの姿のなかに、自分(の願望)を重ねているのではないかと思われる。イエスに抱かれて寄り添いたい、という。

(中略)

エスに愛されたとされる使徒ヨハネは、女性の神秘家や修道女たちが、みずからを投影しやすい存在でもあったのだ。

ああ、世界最古のBLって聖書だったんだ。思わずそう思ってしまいました。

 

キリスト教が性に対して厳格的なのは、ある意味で正しいと思います。ネットで検索してみても、やはり神父は結婚できない場合もあるみたいです。

ただ厳格なのに、いえ厳格だからこそかもしれませんが、人間の欲動からくる想像力の凄まじさや、現代の「クィア」にも通じる性多様性に結実することへの面白さに、大変感心いたしました。

 

やはり美術などの創作物に、ホントのところは滲み出ちゃうものなのでしょうね。

 

ではまた次回。