今日はお休みです。
『THE FIRST SLAM DANK』やっと買えました!
さて今回はマンガ『攻殻機動隊』2話 SUPER SPARTANの感想 その2です。
前回はこちら
※以降、ネタバレを含みますのでご注意ください。
前回はタイトルに関する説明を行いました。
今回から本編に入ります。
まず1ページ目。
草薙素子少佐率いる面々が花見をしているシーンから物語は始まります。
花を肴にして酒を呑んでいると、荒巻から無線が入ります。
「仕事だ 少佐 南新浜4区 水仙と合流して待機しろ」
このセリフにある「新浜」という地名は架空のものです。本作では第三次世界大戦と第四次世界大戦を経たあとという設定があり、それらの戦争により東京は(文字通り)消滅しています。そのため首都機構を移転させた新たな首都が「新浜」です。
この荒巻のセリフに対して少佐は以下のセリフを発します。
「やなこった へへーーん」
ここで大きく少佐の姿が大きく描かれます。いたずらっ子のような無邪気な笑顔です。
アニメ版では冷静沈着な理性的なキャラクター、悪くいってしまえば「暗い」印象の強い少佐ですが、マンガ版ではこのように茶目っ気がある明るいキャラクターとして描かれており、ギャップがあります。
無邪気に断った少佐に対して荒巻は以下のセリフを発します。
「貴様が要求してた予算は通したぞ 仕事しろ」
このセリフを聞くと、少佐は赤い盃の酒を口に煽ります。そのコマの下に赤い盃の内面が描かれます。
そこには残った酒に桜の花びらが落ちていること、そして盃の内面に旭日章があることが描かれています。
少佐はフチコマに情報確認するように命令を出して2ページ目に続きます。
この1ページ目のポイントは「なぜ少佐たちは花見をしていたか」、そして「なぜ盃の内面にある旭日章があるのか」です。
まず「花見の理由」から。
美しい桜の描写と少佐の無邪気な笑顔から、「花見がしたかったから花見していた」みたいにも見えます。しかし少佐はアニメより無邪気とはいえ、そこまで享楽的な人物ではありません。
この理由は5ページ目の「脳潜入(ブレインダイビング)」のシーンで、しっかり書かれています。
このコマ、脳潜入のカオスを演出するため歪んだ絵と文字で読みにくいんですが、よく見ると荒巻の以下のセリフが書かれています。
「国際対テロ機関の設立予算を出すまで仕事をせんだとォ?!」
つまり少佐は上司である荒巻と予算交渉をしており、そのストライキとして花見をしていたのです。
「やなこった へへーーん」と無邪気な顔で答えているので、働くかどうかは気分次第なならず者的な印象があります。しかしその実はしっかりとした交渉のもと、自身の権利の上での「花見(ストライキ)」であり、武力任せのならず者たちとは一線を画す存在として描かれています。
そして盃の内面に描かれた「旭日章」について。
このマーク、お巡りさんの帽子についているアレですね。主に警察機構や国家権力を象徴するマークです。
で
ポイントは盃の内面についていること。
お巡りさんの帽子もそうですが、所属を表すには他者から見えるように外面についていなければなりません。
よって盃の内面についているこのマークは所属を表すものではありません。
では何を意味するのか?
この盃は花見で用いられたもの、そして花見はストライキであることを考えると、「盃内面の旭日章」の意味がわかります。
少佐たちのストライキは自分たちが望む「国際対テロ組織」の設立者予算を求めて、でした。設立予算を求めるということは、まだその組織は存在していないということです。
つまり少佐は既存の警察では対応できない「やるべき」ことのため、国家を利用して予算を出させるためにストライキをしているのです。
この花見(ストライキ)の乾杯のときに少佐はこんな演説をしたのかもしれません。「我々は警察に行えない正義を行うのだ。そのためには警察(国家)でも利用しよう。さぁ盃の旭日章を飲み干してしまえ」
セリフ違うかもしれませんが、このような意味合いで用いられたものと思われます。つまり「盃内面の旭日章」は自身正義のためには国家も利用するという意志の現れです。
まとめると1ページで表現されているのは以下の通り
- 少佐たちは予算交渉のストライキとして花見をしている(仕事を差し置いてただ花見をするならずものたちではない)
- 盃内部の旭日章が示す通り、少佐たちは国家に忠誠を尽くしているわけではなく、自分たちがやるべきことのために国家を利用しようと考えている
ただのならず者としてのサボタージュではなく、ストライキであること、表象的に国家利用の意思表明をしていること。
まだ1ページですが、情報量がケタ違いです。これを読み解いていくのが本作の醍醐味だと思います。
今回はここまで。
夜、雪が降っていました。3月も終盤差し掛かりですが、まだまだ寒いですね。
それではまた次回。