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マンガ『攻殻機動隊』感想 SUPER SPARTAN (4) 4〜5ページ

本日はお休みです。

単休で雨なのでゲームにふけることに決めました。Fallout76面白いです。

さて今回は前回に引き続き、マンガ『攻殻機動隊』第2話 「SUPER SPARTAN」の感想について書いていこうと思います。

前回はこちら

akutade-29.hatenablog.com

 

※以降ネタバレを含みますのでご注意ください。

 

前回で3ページまでの感想が終わりました。今回は4zページから書いていこうと思います。

 

4ページ

AI搭載の多脚戦車「フチコマ」に乗って南新浜に向かう一行。そこで少佐が配下に呼びかけます。

少佐「全員 脳潜入(ブレインダイビング)用意!」(A)

バトー「無線だと枝がつくぞ(盗聴されるコト)」(B)

少佐「状況説明しておいて欲しいでしょ」(C)

少佐「枝祓いに超天才(ウィザード)電脳技師の攻性防壁を使う ハッカー殺しのハードな奴よ」(D)

少佐「チリチリする辺がゴーストライン それ以上は潜るな」(E)

バトー「ブクブクブクブク…」(F)

ここで4ページ終わり。

 

このページでは「脳潜入(ブレインダイビング)」の技術の名称が明かされます。実際の「脳潜入」は次の5ページで行われるのでその前フリ的なページです。

 

ポイント1つ目は(B)の補足説明。(盗聴されるコト)。

本作で語られる「脳潜入」から考えると「盗聴」という表現は正しくありません。(5ページで明らかになりますが、脳潜入は”聴覚”だけではなく五感すべてで共有する行為です)

ただ本作の発表が1989年で、インターネット普及前夜であったことを考えると、当時の読者からすると、現代の我々よりも難解だったものと思われます。

そのため正確ではないが、伝わりやすさを重視して「盗聴」という表現が用いられているのだと思いました。

またセリフ(E)「チリチリする辺がゴーストライン それ以上は潜るな」これは第2話の伏線となる重要なセリフです。このセリフを何を言っているのかわかりやすく展開すると以下のものだと思います。

  • 脳の情報保存領域には「ゴースト」と呼ばれる領域が存在する
  • (少佐は)「ゴースト」領域の侵入を許さない。

「ゴースト」という単語は映画・アニメでも出てくる本作のテーマに近いワードの一つです。脳潜入は許すがゴーストラインを超えることは許さないという表現より「脳」の情報保存領域のなかでも、より根源的な領域を指しているものと推測されます。恐らくは本能や人格など、その個人が個人として行動するためのアーキテクチャみたいなものでしょう。

そして少佐はそんな「ゴースト」への侵入を許可していません。ここは2話の伏線でもある重要なポイントです。

伏線② 少佐は「ゴースト」領域の侵入を許さない

 

5ページ

1コマ バトーの顔(前のページ ラストコマを受けて)

2コマ 宇宙背景にカミナリ(無線接続の表現) 「ジジ…」という書き文字

3コマ 脳潜入の表現(イラストの断片が少佐とバトーたちの間に重なるように書き出される)

4コマ 愚痴る配下と拗ねる少佐

バトー?「ノイズが多いな おまえの脳は」(G)

少佐「生理なんだよ」(H)

不明「少佐 義手が痛みますね」(I)

不明「何です このニガいの 鎮静剤ですか?」(J)

5コマ 自分の脳から追い出す少佐

6コマ デリカシーのなさに怒る少佐

少佐「そろいもそろってゴースト近くまで潜ってきやがって くそッ」(K)

少佐「これだからデリカシーのない野郎共を脳に入れるのは 嫌なんだ (プンスカ)」(L)

 

まずポイントは「2コマ」目。「ジジ…」という書き文字。

これは前回書いた「伏線① 少佐は聴覚素子に不調があり通信に障害がある」の補足です。無線通信時には「ジジ…」という音が発生することを抑えておきましょう。

 

次に「3コマ」と「4コマ」に続く「脳潜入の描写」です。

まずは「3コマ」目で脳潜入を絵で表現しています。左側に目をつむる少佐があり、右側にバトーたち配下六名の顔が並んでいます。その間のイラストの断片が重なるように描かれて、手書きのセリフが書かれています。

この絵は「脳」による情報共有を表現したものだと思います。「絵」や「文字」などの二次元的な情報共有の場合、時系列に沿った情報の共有が必要になります。

例えば「林檎が赤い」みたいな文章としても、林檎→赤いと順を追って表現しなくてはなりません。そもそも「林」の次に「檎」がないと、「林檎」が表現できません。

しかしここで描かれる「脳潜入」では、そのような時系列を無視した「体験」もしくは「記憶」を一気に共有できるのだと思います。そのためにイラストの断片が重なったような絵を書いて、「脳潜入」の特異性を表現しているものと思われます。

そして「4コマ」目では、「絵で表現できない脳潜入の補足説明」がセリフで行われます。セリフ(I)(J)などがわかりやすいでしょう。「痛み」や「味」などの感覚も共有することができるものとして「脳潜入」を表現しているのです。

 

次に「5コマ」目と「6コマ」目。脳潜入を終えた後の少佐の反応です。

5コマ目では少佐のセリフのふきだしは「赤い枠線」で描かれています。(それまでは「青い枠線」)これは少佐の怒りを表現しているものと思われます。そして6コマ目のセリフ(K)(L)で少し茶目っ気を出しつつ(プンスカ)少佐は愚痴ります。

この流れを見ると、「部下に厳しい指示を出す少佐」と「茶目っ気があるリーダー」みたいにも見えます。

おそらくはその側面もあるのでしょうが、5コマ目の吹き出しが「赤い枠線」で描かれているところから考えるに、このタイミングで少佐は本気で怒っていたのかも知れません。そして6コマ目ではそれを誤魔化すために愛嬌(プンスカ)を出しているとも見えます。

そのように考えると、この5コマ目6コマ目は単に「部下を追い出した」という表現だけではなく、「本気で怒ってしまうほど、少佐にとってゴーストは神聖なものだ」という解釈もできるように思います。

 

以上、4〜5ページの感想でした。

 

今回はここまで。

ローソンで売っているサクサククロワッサンが思ったよりサクサクでした。

それではまた次回。