Idiot's Delight

煩悩まみれで気軽に日々を過ごしております

マンガ『攻殻機動隊』感想 SUPER SPARTAN (5) 6〜7ページ3コマ

今日もお仕事です。

梅雨かと思うくらいに雨がひどい。

さて今回は『攻殻機動隊』第2話 SUPER  SPALTANの感想を書いていこうと思います。

前回はこちら。

akutade-29.hatenablog.com

 

※以降、ネタバレを含みますのでご注意ください。

 

今回は6ページから。

このページから少佐たちと公安の作戦概要を共有するブリーフィングが描かれます。ぱっと見すると単なるブリーフィングなんですが、読み解いていくと公安に対する少佐の不信と蔑視も込められたスリリングな情報戦の様相も含まれています。この多重構造がたまりません。

ではどのような描かれ方をしているのか順を追って説明していきます。

 

6ページ

1コマ目 合流地点の新浜4区。青いトラックが停まっている

2コマ目 そのトラックの運転席には少佐の部下である「サイトー」が座っており、社外の人物と何かしらのやりとりをしている

3コマ目 サイトーと車内の少佐がアイコンタクトする(少佐の顔には頷きを示す線が添えられている)

4コマ目 車内で公安の女性型アンドロイドから説明を受ける少佐とバトー

少佐「聖庶民救済センター?」

女性「福祉施設です。少佐殿 戦災孤児をひきとって生活 学習 職場を提供する所です」

 

6ページで注目すべきは2コマ目、3コマ目です。少佐の部下「サイトー」が車外の人物とやり取りして、それを少佐に伝えている場面。おそらくこれは少佐たちが独自で情報収集をしていることを示しているのだと思います。いまから公安から情報提供を受けるという段階に於いて、少佐はその情報をアテにしてません。ここに少佐の公安に対する不信と蔑視が伺えます。

 

7ページ

1コマ目 舌を出して帰ろうとする少佐

少佐「じゃあ私らは必要ないな」

少佐「バイバイ」

2コマ目 呼び止める公安職員

女性「洗脳装置(ゴーストコントローラー)があるんです 少佐殿」

3コマ目 それを受けて眉を顰める少佐

少佐「アナクロォ」

 

1コマ目で舌を出す少佐を描き、公安(国家権力)への反抗心を表現しているように思われます。また深掘りすると「施設概要なんていいから、私たちに依頼する要点を話せ」と行動で示しているようにも見えます。少佐の反抗心と合理性が詰まった1コマですね。

2コマ目ではその意図を汲んで、今回の作戦の要点(少佐たちに仕事を依頼する理由)を述べます。その理由は「洗脳装置」です。「洗脳装置」にはルビで「ゴーストコントローラー」とふられています。私たちの感覚では「洗脳」=「催眠術のようなメンタルコントロール」とイメージしがちです。コントロールできるけれど、確実性は薄く曖昧なもの、みたいな印象があります。しかしここで登場する「洗脳装置」はもっと具体的で確実なものなのでしょう。前回の記事でも説明しましたが、「ゴースト」とは脳の保存領域の根源的な部分です。作中の描写から(おそらく)本能や人格などのアーキテクチャが保存されいる領域と推察されます。本作で登場する「洗脳装置」は我々が想像する「メンタル」をコントロールするものではなく、ルビで示されている通り、この「ゴースト」をコントロールするものです。つまりは「脳を直接いじる機械」な訳ですから、我々が想像する「洗脳装置(メンタルコントロール)」より直接的で具体的なものであることが推察されます。

そして3コマ目。眉を顰めながら「アナクロォ」という少佐のコマ。ここはなんとなく読み飛ばしてしまいがちですが、結構すごいことが書かれています。「アナクロ」とは「時代錯誤」という意味です。つまり上記のような「ものすごい洗脳装置」ですら過去のものというのが本作の世界観です。じゃあ「当世的な主流」はなんなんだと想像するに恐ろしいものがありますね。しかしなぜわざわざ「時代錯誤な洗脳装置」を出しているのでしょうか? その理由はおそらく「本作の当世的なもの」をいきなり出しても読者が理解できないからではないでしょうか。例えば江戸時代の人にいきなりスマホを見せても理解できないでしょう。江戸時代の人たちに「未来はすごい」を表現するなら、その人たちが理解できる範疇にて語らなくてはなりません。「牛がいらない牛車」みたいな文脈で「自動車」を説明するみたいな感じですかね。ここで「時代錯誤な洗脳装置」を出している理由もおそらくこれに近いものと思われます。読者がかろうじて理解できる「アップデートした洗脳装置」を登場させ、それを時代錯誤と断ずることで現実との隔世感を表現しているのでしょう。そしてこの「洗脳装置」を「(読者が理解できる)隔世感を表現するギミック」としてだけではなく、ドラマの主要構成物としても取り上げているところが本作の構成の素晴らしいところと言えるのではないでしょうか。

 

今回はここまで。

6ページの「独自の調査」は以降のページの伏線にもなっています。

それではまた次回。