今日はお仕事です。
ブログ記事100件越えました。やったね!
さて今回は自作小説「花奴隷」の続きを書いていこうと思います。
前回はこちら。
それではご照覧あれ。
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『花奴隷』 8話
花畑主(はなばたけぬし)も元は奴隷だった。
凍えるような寒空の下、荊棘で傷つく指先の痛みは今も覚えている。
当時の奴隷主は横柄な男性で、頭の殆どが綿での詰まっているようだった。
いま思えば理不尽なことを言われていたようにも、思い返すことができる。
「誇り」や「生きがい」が彼の口癖だった。
彼女はそれらの単語の意味がよくわからなかった。
それはまるで野犬の遠吠えのようで、自分たちを威圧する意図だけは感じ取っていた。
(あとになって意味を知り、彼女は笑ってしまった。どうやってそんなものが持てるというのか)
花の刈り取りの後、彼女たちは花に火をつけて煙を吸い込むことが求められた。
その煙を吸い込むと喉はひりつき、肺は焼けるような痛みがあった。
彼女たちは刈り取り以上に、その煙を吸い込むことが苦痛だった。
目に見える傷は我慢できるが、見えない傷は耐え難い。
広い部屋に敷き詰められ彼女たちは、刈り取ったすべての花を煙にして吸い込むまで、寝床に戻ることは許されなかった。
苦痛に歪む顔が並んでいる。咳き込む音が方々から聞こえる。
寝床に戻っても、それらの光景が瞼の裏と耳に上がって、なかなか寝付くことは出来なかった。
そしていろいろと「理不尽」なことも起きた。
彼女たちはそんな「理不尽」を「理不尽」とは思わなかった。(彼女がその言葉を知ったのは、ずいぶん後になってからだった)
朝起きて、花を刈り取って、煙を吸って、夜眠る。()
それが彼女の一日であった。
そこに疑問が生じる隙間はほとんどなく、しかし「当たり前」と断ずるには抵抗があって、時折どうしようもなく目から涙がこぼれてしまう。
その涙がどこから湧いてくるのかも、彼女にはよくわからなかった。
(つづく)
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今回はここまで。
『刃牙らへん』が面白いです。
それではまた次回。