Idiot's Delight

煩悩まみれで気軽に日々を過ごしております

花奴隷(6)

今日もお仕事です。

最近は22:00を超えると眠さが耐えられないレベルになってしまいます。寒すぎてお布団に困っているのと加齢が原因でしょう。

さて今回は自作小説『花奴隷』の6話を書いていこうと思います。

前回はこちら。

akutade-29.hatenablog.com

 

では、ご照覧あれ。

 

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『花奴隷』 6話

 

食堂は密やかなざわめきに満ちていた。

少年はまた最低の食事を口に運びながら

周りの奴隷少年たちの言葉に耳を傾けた。

これからどうすればいい?

また荊棘で傷つくのは嫌だ。

少年よりも豪華な食事を前に

みんな暗い顔で過ごしている。

 

少年は食事を終えて花畑へと出た。

いつものように

赤い花と白い花が咲き乱れている。

食堂に書かれていたことを思い浮かべる。

白い花は3本で1本。

しかし花畑で咲く花いつも通りとしか思えない。

なんで3本で1本の価値なのだろうか?

誰かに聞きたくても

少年にはその誰かがいなかった。

しかたがないので少年は二色の花へ向かった。

 

「なんで3本で1本なのだろう?」

少年は二色の花を掴んで聞いてみた。

「ここに咲いている花はどれも1本のようだけれど」

二色の花は静かに言葉を紡ぎ出した。

「それが数というものです。数とは絶対的なものでなく相対的なものです」

少年は難しい言葉に怖気付く。

そんな言葉じゃ、ちっともわからない。

「あなたはまるで初雪のよう」

二色の花は混乱する少年に語りかけた。

「泥を知らずに輝いている」

そして二色の花はくつくつと笑い出した。

気味が悪くなった少年は掴んでいた手を放した。

 

少年は結局8本の花を刈り取った。

白い花4本、赤い花4本。

花畑主(はなばたけぬし)の部屋は

昨日とは異なり、白と赤の花で溢れていた。

 

花畑主に花を捧げると

彼女はすこし驚いた顔をしていた。

「てらいのない子だねえ。誰もがお前のようだったら楽だったのにねえ」

花畑主は少し疲れているようだった。

少年から受け取った花束を

他の花と同じよう場所に積み上げた。

「でもそれに甘んじるわけにはいかないのさ。これでも立場ってものがあるからねえ」

そして花畑主は煙管の煙を吐き出した。

少年はお辞儀して部屋を立ち去った。

 

次の日の食堂には不満が吹きこぼれていた。

いつもより貧相な食事を前にした少年たちは

怒りを撒き散らすようだった。

いつもと変わらない食事の少年には

彼らの怒りはよくわからなかった。

いまにも破裂しそうな不満の中、

ひとりの少年が立ち上がった。

「みんな、聞いてほしい!」

少年は彼に見覚えがなかった。

ただその声色は

どこかで聞いたことがあるような気もした。

「みんなの不満はよくわかる! しかし! 花を刈るのを止めることはできない、そうだろう!」

食堂の少年たちは静まり返って

その少年の言葉に耳を傾けていた。

「だから僕は君たちの不満を解消しようと思う! 白い花1本を僕の元に持って来れば、赤い花1本と交換しようじゃないか!」

途端、食堂の少年たちから驚きと喝采が上がった。

「どうだろう、いい話じゃないか?」

少年の目は薄く白と赤に輝いているように見えた。

 

(つづく)

 

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以上、花奴隷 6話でした。

今回はここまで。

夜ご飯は小かぶらと茄子のみそ汁を作って食べようと思います。

それではまた次回。