Idiot's Delight

煩悩まみれで気軽に日々を過ごしております

マンガ『攻殻機動隊』感想 SUPER SPARTAN (6) 7ページ残り

今日はお仕事です。

本格的、春。花粉症要注意。

さて今回は『攻殻機動隊』2話 SUPER SPARTANの感想について書いていこうと思います。

前回はこちら

akutade-29.hatenablog.com

 

※以降ネタバレを含みますのでご注意ください。

 

今回は7ページ4コマ目から。

 

7ページ

4コマ目 公安職員の施設に対する説明 眉を顰める少佐

職員「この救済センターは社会に出す人材のレンシが広い事で知られています」(A)

少佐「政治家 評論家 犯罪者etc.etc.…」(B)

少佐「似たようなもんだ」(C)

5コマ目 荒川が通信で会話に補足する

荒川「公安ではそこを「人間工場」と呼んでおる なければ困るし雑菌が入ったら社会問題だ」

6コマ目 荒川のセリフに笑いながら皮肉で返す少佐

少佐「雑菌が雑菌を恐れるのか?」(D)

7コマ目 洗脳機の説明 証拠がないので踏み込めない

8コマ目 作戦目的を確認する少佐 反発する職員 少佐の腰のデバイスから「ピピピピ」と音が鳴る

少佐「「盗め」?「殺せ」?」(E)

職員「とんでもない!」

 

4コマ目のポイントは何が「似たようなものだ」なのかを考えることだと思います。少佐の直前に職員から「レンジの広い人材」セリフ(A)があるため、その後の少佐のセリフ(B)(C)は「施設から排出される人材のリストアップとそれらに対する厭世感が込められた蔑視」(政治家も犯罪者も同じもの。嫌な世の中だ)みたいに一見すると読めます。しかしこの読み方は誤読でしょう。なぜならその施設から「政治家」「評論家」などは排出されるようには思われないためです。では少佐セリフ(B)はなんの職業を羅列しているのでしょうか? それはこのコマの直前で語られる「洗脳機械」にかかった職業の羅列だと思います。「洗脳機械」にかけて「政治家」「評論家」という職業を考えると「人々を洗脳している」職業とも見て取れます。つまり洗脳機械で洗脳しようとしている犯罪者と「政治家「評論家」を同一視しているのがこのセリフの意味合いです。よってここでの少佐のセリフ(B)(C)の正しい読み取り方は「政治家・評論家は国民を洗脳しているようなものであり、洗脳機械を使っている犯罪者と同じようなもの」だと思います。このように考えると少佐のセリフ(B)(C)からは二つのことが読み取れます。まず一点は「少佐の正義観」です。少佐は5ページでの説明としても記載しましたが「ゴーストへの侵害」をタブー視しています。これらの「洗脳されている職業」を羅列して嫌悪感を示すことで、少佐のタブー視が補強されていると見えます。もう一点は「公安への蔑視」です。セリフ(B)(C)を上記の解釈が正しいとするなら、少佐は公安職員のセリフ(A)に応えていない(聞いていない)ことになります。4コマ目の少佐をよく見ると職員から目を逸らしているのがわかります。このように4コマ目は一見、会話が成立しているようにも見えますが、その実として「見ず聞かず」で少佐の公安に対する蔑視が込められていると読み解くことが可能です。

 

そしてこのコマ以外でも実は7ページ目では少佐の公安に対する蔑視が詰め込まれています。

 

5コマ目、6コマ目はわかりやすく蔑視ですね。荒巻のセリフに対して、少佐はセリフ(D)で皮肉を返しています。5コマ目のセリフにて荒巻は「人間工場」という通称を明らかにします。これは公安内部において「洗脳」が暗に認識されているゆえの通称と思われます。荒巻のセリフから公安の体質を読み取った少佐は皮肉で応えます。「人間工場などと洗脳を暗に認めている公安も同じ穴のムジナだろう」というのがセリフ(D)の意味合いだと思います。

 

7コマ目は洗脳機械の説明です。ここは手書きの補足として「形や名前は無意味だな」と書かれています。この言葉通り、2話ではこの洗脳機械は登場しません。2話全体が洗脳機械の実在を問うものではないということが前振りされています。

 

8コマ目のセリフ(E)は過激なものです。これは少佐たち実力行使部隊の短絡性が表れているようにも見えます。しかし1ページの説明でも記載している通り、少佐たちはならず者集団ではありません。よってこのセリフ(E)は少佐たちの短絡性(力任せの解決)を提示しているものではないと考えられます。では何を表しているかといえば、ここも「公安への蔑視」が込められているのだと思います。「雑菌みたいな公安が私たち実力行使部隊に依頼することなんて、短絡的な盗めとか殺せでしょう?」という皮肉であることがセリフ(E)の意味合いだと思います。

 

この様に7ページは単なるブリーフィングの一幕の様にも見えますが、徹底して公安に対する少佐の「倫理的な侮蔑」が込められています。そして8コマ目に書かれている「ピピピピ」という音から、この蔑視は倫理的なものから能力的なものに切り替わっていきます。

 

以上、7ページ目残りの感想です。さらっと見るとただ単にブリーフィングなのですが、いろいろ込められているものですね。

 

今回はここまで。

夜ご飯はウィンナーエッグ(ウィンナー焼いたのと目玉焼き)でした。美味しかったです。

それではまた次回。