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マンガ『攻殻機動隊』感想 SUPER SPARTAN (8) 9〜11ページ

今日はお休みです。

花見を楽しんでいます。

さて今回は『攻殻機動隊』第2話 SUPER SPARTANの感想つづきを書いていこうと思います。

前回はこちら。

akutade-29.hatenablog.com

 

※以降ネタバレを含みますのでご注意ください。

 

今回は9ページから。

少佐たちのブリーフィングはまだ終わっていませんが、9〜11ページは「施設内の描写」が行われます。今回は9〜11ページを一挙に説明していこうと思います。

 

9ページ

1コマ目 施設の少年たちが食糧配給(おかゆ)に列をつくっている。時計の針は「0」を指している。壁には「鎮」の文字。

2コマ目 不服そうな表情を浮かべながら器を手に歌を歌う少年たち

3コマ目 おかゆを器に入れる

4コマ目 おかゆを受け取った少年は舌を出す

5コマ目 院長先生の厳しい表情

6コマ目 席につく少年たち

 

1コマ目。このコマでは以下の二点において「施設内の規律」が表現されています。

(1)時計の針が「0」を指している

(2)列をつくる少年が「番号順」に並んでいる

(1)は大きく時計が描かれているのでわかりやすいです。(2)はわかりづらい(服の「番号」は胸に書かれていて、胸の前に器を持って並んでいるので全員の番号は見えない)ですが、番号が視認できる「5」「6」「15」の少年たちとその人数から、「番号順に並んでいる」を表現していると思います。この二点において施設内は非常に規律厳しく運用されている様子が見て取れます。壁の「鎮」は何らかの意味が込められていると思うのですが、教養不足でわかりません、、、。

2コマ目はただ少年たちが歌っている様子のようにも見えますが、前コマで示される「列が番号順」であったことを考えると少し異様です。「背の順」でも、「年齢順」でもないからです。(背は低い高い入り混じりデコボコ、年齢は幼い子供から老人みたいなものもいてバラバラ)おそらくこの「番号」は「背」や「年齢」などの個人特性によって付与されたものではないことを表しているのだと思います。施設に入所した順など、管理側の都合によってのみ与えられていることが示唆されているのだと思います。(”奴隷のようだ”と見るか、”平等・公平の歪さ”と見るかは人によりけり)

このように施設では徹底した管理体制で運用されていることがこのページから伺えます。

 

10ページ

1コマ目 席についた少年たち画面の手前に視線を注ぐ(院長先生の方を見ている)

2コマ目 院長先生の顔アップ

院長「食え!!」

3〜5コマ目 猛烈な勢いでおかゆに喰らいつく少年たち

6コマ目 ストップウォッチを見ながら手をあげて静止する院長先生

院長「やめ!」

7コマ目 院長先生の言葉通りピタと静止する少年たち(1コマ目と同じ構図 おかゆは綺麗に消えている」

8コマ目 不服そうな視線で俯きながら見上げる少年と厳しい表情で見下ろす院長先生

9コマ目 その少年を「電気が走る機械」のようなもので折檻する院長先生

10コマ目 食堂から少年たちを追い出す院長先生

院長先生「不服があるなら食うな!」

院長先生「さあ 全員 仕事部屋へ行くんだ!!」

 

不服そうに「おかゆ」を受け取った少年たちでしたが、院長の言葉により猛烈に食べ始めます。これは2話タイトルにもなっている「スパルタ(教育)」でも見られた「欠乏状態」を示しているのだと思います。(とてもお腹が空いていたので食らいついている)

食する際の食事の量は「決して満腹してだるくなることなく、欠乏状態で過ごすことに無経験でない程度」と決められていた。

ja.wikipedia.org

食事の時間を計測するほどの規律性、そして食べたくもない「おかゆ」に食らいついてしまうほどの欠乏に耐える従順さがこの10ページには現れていると思います。

 

11ページ

1コマ目 工場で檄を飛ばす院長

院長「いいか!」

院長「食った分 寝る分 働かせてもらえる分働け!」

2コマ目 手が焼け爛れている少年

少年「て・・・・手が!」

3コマ目 少年の後ろに院長先生が怖い顔で立っている

4コマ目 その少年に折檻する院長先生を映すモニター

5コマ目 (公安の車内に戻る)施設内の様子に疑問を覚える職員

少佐「いたそォ」(手書きで小さく)(A)

職員「なぜ 人権擁護局が 騒がないのかしら」

6コマ目 少佐の達観した笑顔

少佐「ここで作っている浄水器は人権より重要だからね・・・・ 大衆は残酷よ」(B)

 

11ページまでの施設内の様子は「スパルタ(教育)」と言っても差し支えがないものでした・そして11ページより再びカメラは公安の車内に戻ります。ここで着目すべきは「施設内を確認した少佐の反応」です。

片目をつぶりながら「いたそォ」(A)という、「大衆は残酷よ」(B)と達観して言うなど、少年たちに対して同情的なセリフは述べますが、飽くまで「同情どまり」です。昔のドラマで「同情するなら金をくれ!」というセリフがありますが、「同情」には実行性・実効性がありません。つまり(この時点の)少佐は、少年たちに対して「同情はするが、介入するほどではない」と考えていることを示しているのだと思います。

普通のヒーローものでしたら「子供たちがかわいそう!救わねば!」となりそうなものです。(実際それくらいの惨状)しかし本作ではこのレベルでは正義執行の動機とならないという宣言でもあるのでしょう。簡単にいってしまえば少佐は「(救助が必要と思うほどには)子供たちがかわいそうとは思っていない」ということです。以降で少佐たちは突入に向けて動き出しますが、その動機を考える上でこのポイントは重要だと思います。

 

以上、9〜11ページの感想でした。施設はスパルタですが、少佐が介入するほどのものではありませんでした。これでは少佐たちは突入できないので、さらに深く施設を捜査していくことになります。

 

今回はここまで。

昼寝から覚めたとき、静かで明るかったので「天国か!?」と思いました。

それではまた次回。